日本人が英語を苦手とする理由に、実際に話す、使うなどのアウトプットする機会がないというのは大いに関係あると思います。
そのため、外国人観光客に英語で話しかけるなど積極的に英語を使う努力をされている人もいるかもしれません。
過去に、そういった方法で英語をアウトプットする訓練をしてペラペラになった子どもの話も紹介しました。
しかし、個人的には、この方法はあまりおすすめしたくありません。
その理由について説明します。
目次
日本では日本語を話せばよい
東京オリンピックの開催が決定し、英語学習者が増えたそうですが、語学学習はそんな簡単なものではありません。
現在20歳以上のいわゆる成人にとっては、中学3年間でみな平等に英語を学んでいますが、それでも話せないのなら、その時点でよくわかっているはずです。
語学の習得はそんな甘いものではない
少なくとも、日本にいる外国人と英語で話したいという動機は、語学を習得する長い道のりのモチベーションを持続させるのは難しいと思います。
もちろん、何かを始めるのに遅いということはないし、その動機が何であろうと自由なのですが。
欧米諸国で使われる言語(フランス語やスペイン語、ドイツ語など)がラテン語派生で似ているのに対し、日本語は漢字が中国語と共通しているものがあったり、発音が韓国語と似ているものがあるだけで、全体的にかなり独立した言語です。
さらに日本語は、発音のアルファベットがとてもシンプル(「あいうえお」の五音のみ)なので、話し言葉として英語を習得するのはかなり難しいことです。
自分が日本から出ず、日本にいる外国人を相手にコミュニケーションを取りたいなら日本語で十分。
伝えたいという気持ちさえあれば、義務教育で習ってきた英語にボディーランゲージを使うなどで通じます。
日本に来る観光客のために、英語を習得する必要はないし、それは語学習得の動機としてやはり弱いと感じます。
「日本で出会った外国人に英語で話しかける」という学習法をおすすめしない理由
では、前置きが長くなりましたが日本で出会った外国人に英語で話しかけるという学習法をおすすめしない理由をもっと具体的に説明します。
1. 相手の母語が英語とは限らない
日本に観光に来ている外国人がみな、アメリカ人、イギリス人、オーストラリア人など英語を母語とする国の出身者とは限りません。
また、先ほど「欧米諸国で使われる言語がラテン語派生で全部似ている」と書きましたが、だからといって、フランス語やドイツ語を母語とする国の人がみな英語ペラペラとも限りません。
わたしの知り合いに、実際、母語がフランス語で、英語は日本の中学生レベル(たとえば、ハム&エッグなど)を理解しない人がいます。
(ハム&エッグはフランス語で「le jambon et l’œuf」で英語とはまったく異なるのです。)
目の前にいる人が金髪で青い目をしていても、チェコ語しか解さないチェコ人かもしれないし、スウェーデン語しか話せないスウェーデン人かもしれないのです。
道を聞かれたら教えてあげる、路線図を見ながら困っている人に電車の乗り方を教えてあげるなど必要なときに声をかけるのは大切ですが、それは、相手が日本人であっても同じことですよね。
わたしたちがヨーロッパなどに旅行に行って「ニーハオ。」と言われたらどういう気持ちがするでしょうか。
日本語で「こんにちは。案内しましょうか。」と言われたら嬉しいでしょうか。
警戒する気持ちのほうが強いのではないでしょうか。
2. 「無料の学習相手にされている」と感じている外国人は多い
日本の研究機関に勤める中東の某国出身(英語・日本語ペラペラ)の人がこんな話をしてくれたことがあります。
トルコという国は、観光大国として確立しつつあるのに、実は英語が通じない場面が多いという話をされていたときです。
誰かが「日本と似ているのでは?」と言いました。
彼の答えは「日本は、自分の英語力を試したくて一生懸命英語で話しかけてくる人が多い。」ということでした。
彼自身は、そういう時は日本語が分からないフリをして付き合ってあげるのだと言っていましたが、中には、英語を学びたいなら自分で英語圏に行くべきと考えている人もいます。
ごもっともなことです。
英語が母語またはペラペラとは限らないだけではなく、相手が観光客ではない可能性も大いにあるのです。
3. 日本語を学ぶために日本にいる外国人もいる
以上のように、観光ではなく仕事や結婚などで日本に住んでいる外国人も多いですが、もっと理解しておくべきなのは、日本語を学びたくて日本に来ている外国人がいるということです。
日本語を学ぶために自分でお金を貯めて日本に来て、日本語を話す努力をしている人の学習の機会を奪ってはいけません。
勉強熱心な人はたいてい「日本語話せます。」とか「日本語でお願いします。」と言ってくれるとは思いますが、やはり、第一声でなんのためらいもなく英語で話しかけるのは失礼だと思います。
4. たとえ子どもでも警戒される可能性がある
ヨーロッパでは、親切を働いた後にお金を請求されるということがあります。
集団でスリを働く子どもたちがいます。
日本に住んでいる外国人はもちろん、観光客でも「日本は安全でそういうことはない」と十分理解してくれているとは思いますが、そういう社会の国もあると理解している日本人は、自分から積極的に話しかけに行くということはしないでしょう。
後述しますが、これからは英語力よりも国際人になろうとする発想が大切だと思います。
外国人がいたら、相手が英語を話すとイコールで結びつくのは国際人ではないですよね。
5.その人は日本人かもしれない
見た目が外国人というだけで、日本に慣れ親しみ、日本語を完璧に解する人かもしれません。
また、日本生まれ日本育ちで日本語しか話さないハーフかもしれません。
今の時代、見た目が外国人に見える=日本人ではないという考え自体が差別になりますし、今後はもっとそういった問題が明るみになるでしょう。
国際人=英語が話せるではない
多民族国家のアメリカやいろいろな国と密接しているヨーロッパでは、いろんな習慣や宗教観をもった人と多くかかわるため、常に会話や接し方に気を配っています。
その人が持つ様々な背景は、パッと見ただけでは分かりません。
だからこそ「外国人だから英語で話しかけよう。」という安易な姿勢はいくら英語が上手でもそれは国際人とはいえないし、むしろ創造性の欠如、真の国際人の真逆だといえます。
まとめ
「日本で出会った外国人に英語で話しかける」という学習法をおすすめしない理由
いかがでしたか?
もちろん、英語を話そうとする積極性は大切です。
日本に観光に来ている外国人を相手に英語を話そうというアイデアは、何年か前であればいい考えだったのかもしれませんが、外国人労働者や国際結婚、またそれによるハーフの子どもたちが増え続けている今、もっと広い視野を持つ行動が必要になると思います。
- 日本から出るつもりがないなら、話す言語は日本語だけで十分
- 「日本で出会った外国人に英語で話しかける」のは失礼にあたる
- 英語が話せることが国際人ではない
- 相手の母語が英語とは限らない
- 「無料の学習相手にされている」と感じている外国人は多い
- 日本語を学ぶために日本にいる外国人もいる
- 子どもであっても警戒される可能性がある
- その人は日本人かもしれない
コメントを残す