スイスレポート(3)スイスの公教育システム




スイスの子どもたちの夏休みの過ごし方と、大学の教育システムについて書きました。

 

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スイスが「幸せな国」と言われるのも、経済的に豊かであるのも、ノーベル賞受賞者数が世界最多(人口比)であるのも、子どもが自然の中で伸び伸びと過ごしていることや、スイスの教育システムが大きく関係していると思えてなりません。

 

今日は、スイスの公教育システムについてみていきたいと思います。

 

スイスとシンガポールに共通する「学力別早期振り分けシステム」

 

以前、テレビでシンガポールの公教育システムが紹介されていました。

 

シンガポールは、2015年OECDの「世界の学習到達度ランキング」調査で、「科学」「読解力」「数学」のすべてで1位となり、「教育先進国」と言われるまでになっているそうです。

 

72か国・地域

 

2015年以降の調査結果は見つかりませんでした。

 

シンガポールの公教育システム

 

シンガポールの公教育システムがどういったものかというと、

小学校卒業までに将来やりたいことを決めさせる

というものです。

 

具体的にいうと、早い段階で学力別に、その後の進路を振り分けるシステムで

 

小学校6年生全員が「学力別早期振り分けテスト(PSLE)」を受験し、その成績で中学校のコースが決まる

というものです。

表1:シンガポールの学力別早期振り分けシステム

 

 

そして、中でも「特急」「普通」「技術」に振り分けられる生徒が多い。

 

表2:シンガポールの学力別早期振り分けシステム

 

 



 

スイスでは50年以上前に同じシステムを導入

 

この教育システムは、実は、スイスでは少なくとも50年前にはこのシステムを導入しており、今も大きくは変わっていません。

 

前回の記事で、スイスの大学進学率はかなり低いということを書きましたが、必然的に大学に向けた勉強をする学生が少ないということになります。

 

そしてそれ以外の子は、勉強と実務を半分ずつ行うような職業訓練学校に通います。

 

シンガポールの表の「技術コース」がこれにあたると思います。

 

スイスとシンガポール、同じ教育システムを導入していますが、決定的な違いがあります。

 

それは何でしょうか?

 

スイスとシンガポール 同じシステムの中で違うこと

 

スイスとシンガポールが同じ(ような)教育システムの中にありながら、決定的に違うのは、スイスはそれを、縦ではなく横で考えているということです。

 

競争ではなく、共存

 

これは、長い歴史と文化によって根付いた潜在的な考え方なのでしょうがないと思いますが、スイスは、この教育システムに子どもたちを自然に順応させています。

 

競争ではありません。

 

大学へ進学することがいいことでも偉いことでもなく、それを必要とするものがそこへ行く

ということです。

 

前述のシンガポールの公立小学校が紹介されていた番組で、武田鉄矢さんが、

「日本では、勉強に向いていない子が学校に行きすぎる。」

と言っていました。

 

これがまさにスイスの教育のあり方です。

 

しかし、シンガポールも日本も含め、アジア諸国は、どうしてもこれを縦にしたがります。

 

そして、親の世間体や見栄など、余計なものがくっついて競争となり、子どもが大きなプレッシャーを背負うことになります。

 

ですから、シンガポールが教育先進国というには時期尚早です。

 

10年、20年後にはじめて分かるのではないかと思います。

 

やり直しができる

 

この教育システムについて、実際にシンガポールの公立学校に子どもを通わせている保護者は、

「PSLEは人生の100%を決める」

と言い切っていますし、子ども自身も

「いい結果が出ればいい大学に行ける。そうすれば良い将来が待っている。」

と言っていました。

 

良い結果が出れば、この先目指せる大学や職業への道がひらけ、エリート人生の入り口に立つことができるが、そうでなければ、12歳の時点であらゆることを諦めなければならない

 

このような考えを、親も子も持っているようでした。

 

一方スイスでは、前回の記事でも書いたように、社会人経験を積んでから入学できるような大学レベルの学校があります。

 

13歳で技術コースになり、16歳で職業訓練のクラスに入っても、社会経験を積む中で、新たに学びたい分野が見つかれば高等教育機関、専門単科大学、HECなど、他国の「大学」レベルにあたる学校に入ることができるのです。

(ちなみに、修了すると「学士」や「修士」が取得できます。)

 

「学力別早期振り分けシステム」の良い点

 

小学生くらいの時は、何のために勉強をするのか分かっていない子が多いと思います。

 

勉強が嫌いな子、たくさんいますよね。

 

このシンガポールやスイスの早期振り分け制度は、子どもたちが

何のために勉強するのか、自分が何を得意とし、どういった仕事をしてみたいか

これらを考えるにはとてもよい制度だと思います。

 

また、子どもが小学生の間に、親が子をしっかりと観察できる点もよいですね。

 

スイスの考え方はとてもシンプル

 

「子どもの能力を最大限に伸ばしてあげたい」と考えるのは間違いだと思いません。

親として当然のことです。

 

でも、子どもに本当にその能力があれば、ほうっておいても自然に伸びるし、選択を間違えても、子どもが自分自身で軌道修正していけます。

 

環境を整え、たくさん愛情を注ぎ、たくさん自然の中で遊ばせ、あとは自主性に任せる

 

これが、スイスの多くの親が持っている考えだと思います。

 



 

まとめ

 

スイスの公教育システムについて

いかがでしたか?

 

まとめ
  • 「学力別早期振り分けシステム」は、競争ではなく、 12歳の段階での才能や能力を見分けるもの。
  • スムーズに勉学の道(大学)に進まなくても、大人になって学ぶチャンスがある。

 

将来が予測できる時代なら、親は、早期教育をして安心することも出来たかもしれません。

 

ただし、今は変化に富み、予測できない時代です。

 

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12歳で将来を決めても、そのまま予定通りにいくとは限らないし、逆に言えば、誰でも、いつからでも、どんなことにも挑戦できるのです。

 

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自ら想像し、工夫し、学び、人生を切り開いていける子に育てて行きたいですね。

 

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